PATSNAP シンガポール案件のレコード収録

PatSnapをご存じでしょうか

PatSnapという商用特許データベースをご存じでしょうか?100か国以上の国の案件を収録した特許データベースです。

最近では「PatSnapとCASが戦略的パートナーシップ締結」のような報道もありました。

「100か国以上」なんてのは他にも色々とあります。DOCDB由来のデータを収録しているデータベースは、有償・無償を問わず収録国の多さを売りにしています。しかしDOCDBのアジア圏諸国の案件の収録率の低さは有名な話です。2020年4月現在では、ESPACENETでTH(タイ)国案件を検索しても僅かに11件しかヒットしません。VN(ベトナム)国案件はの収録も210件だけ。これでは特許調査のためのデータベースとは言えません。

筆者が興味を惹かれたのが、この PatSnap データベースがシンガポール生まれであること。ASEAN生まれのデータベースなら、DOCDB以外にも情報源を拡げているのでは?

COVID-19の緊急事態宣言の中で、同社からこんな太っ腹な施策がアナウンスされています。

そこで筆者も無償アカウントを発行していただいて、ASEAN案件の収録を調べてみることにしました。

シンガポール案件レコード収録

まず調べてみたのはPatSnapの生まれ故郷のシンガポール。PatSnapの収録を、同国知財庁が運営するIP2SG、WIPOのPATENTSCOPE、欧州特許庁のDOCDB、日本国特許庁のFOPISERのそれぞれと比較してみました。

5種のデータベースそれぞれで出願番号の形式が様々です。この番号形式を統制して比較することで、「同じ案件」がどのデータベースに収録されているかを詳細に調べてみました。

横軸:出願年
 ※ 信じられないことに、「同じ案件」であってもデータベースによって出願日が異なることが
   あります。
 ※ 出願日を特定するにあたり各データベースに優先順位を設定して、「同じ案件」は
   同じ横軸の位置に投影させました

左縦軸:出願件数
 ※ 5種のいずれかのデータベースに収録された件数を棒グラフで表しています

右縦軸:各データベースの収録率
 ※ 5種のそれぞれのデータベースに収録された件数を縦棒の件数で除算して各年の
   収録率を求め、5本の折れ線グラフで表しました

グラフを見ていただくとわかるようにIP2SG(SG知財庁)の折れ線は100%の位置にへばりついたまま。これはIP2SGに収録されずに、他のデータベースにだけ収録された案件が存在しないことを表しています。

このところASEANに力を入れているWIPOのPATENTSCOPEも2000年~2008年頃に出願された案件の収録率が非常に悪いことがわかります。

DOCDBも先に紹介したTHやVNのような悲惨さではありませんが、ある程度の確からしさで特許調査ができそうなのは、2010年以降に出願された案件だけ。

日本国特許庁のFOPISERは2015年のクリスマス以降何年もデータ更新が途絶えており、2014年以降に出願された案件がほとんど収録されていません。今や特許調査データベースではなく歴史の教科書と化しています。

そんな中でPatSnapのオレンジの折れ線は2010年以降は80%台に低下していますが、御本家のIP2SG以外の他のデータベースに比べると、権利期間全域にわたって優秀な収録率を保っています。検索における操作性はIP2SGより優れており、同国案件の特許調査にあたり有益な武器となりうるものだと考えます。

ここでグラフ化したのは、データベースにレコードが収録されているかどうかだけの情報、いわゆる「レコード収録」であり、特許分類が収録されているか、請求項が収録されているか等々の「コンテンツ収録」ではありません。「コンテンツ収録」の観点でも詳細に調べてみたいところではありますが、無償アカウントが使える4月中に、他のASEAN諸国も調べたいと思っていますし、データベースからの1日あたりのダウンロード制限もあることから、どこまで踏み込めるかどうか些か怪しいところです。

まずは
PatSnapはDOCDBだけを情報源とした、ASEAN案件の調査には役に立たないデータベースではない
という事実数字のご紹介でした。

アジア特許情報研究会 中西 昌弘